いよいよ今週末、大阪都構想
大阪市民ではないので投票権はないけれど、大阪府民としては気になる大阪都構想。
概要
大阪市が政令指定都市として持っている権限や予算を、大阪府に吸い上げ一元化する、というもの。
こうすることでどんな良いこと、そうでないことがあるのか?
賛成派と反対派、それぞれの意見
①【賛成派】二重行政を解消し、大阪(府)全体がスピーディーに発展していける制度である。
維新(橋下府知事)が出てくる前は、府と市が別々の方向を向いてきたことで様々な無駄遣いがあった。例えば、WTC(市)とりんくうゲートタワー(府)、インテックス大阪(市)と大阪国際会議場(府)など。似たような施設を府と市が競って作ったことで、無駄遣いが生じていた。
↔︎【反対派】4人の区長、4つの区議会ができることで調整が難航する恐れがある。調整がスムーズにできる状況というのは、一党(維新)独裁ということだ。
②【賛成派】住民サービスを充実させることができる制度である。
大きな大阪市より小さな特別区にすることで、地域性に応じたサービスを実現させることができ、住民によりお金を使えることができるようになる。
自分たちの望む特別区長を選挙で選ぶことができる(現行の24区長は市長からの任命)
↔︎【反対派】自治が縮小するのだがらサービスは低下して然るべきだろう。また維新の試算の前提は、公共施設の削減やコロナ禍による経済悪化を見込まない条件なので、実際には実現できる財源などない。さらに特別区庁舎の新設を見送ったことで、区外にある施設での勤務となることが想定される、緊急時の対応、災害時の対応は大丈夫なのか?
③【賛成派】民間ができることは民間へ委託することで、税金の無駄遣いをなくすことができる。府と特別区の役割を明確にし、効率化を図ることができる。
④【賛成派】民間を引きつけることで、事業計画のスピードが速くなり民間投資が活発になり、大阪の財政が良くなる。
2つの論理から考えてみる
大都市には2つの論理があるという。
ひとつは、「都市官僚制の論理」=大都市としての成長を目指す
もうひとつは、「納税者の論理」=個々の事業の効率化を目指す
という2つ。
都構想は、この2つの論理をいずれも強調している。改めて上記①〜④を見てみると、
①二重行政の解消…都市官僚制の論理
②住民サービスの充実…納税者の論理
③民間への積極的委託…納税者の論理
④民間の投資誘致…都市官僚制の論理
となるだろうか。
この2つの論理は、トレードオフの関係にある。つまり、財源が制約されている状況においてあれもこれも=成長も節約も!というのは、現実的に難しいのではないか。拡大路線と緊縮財政を1度にやろうとしているように思える。
が、反対派は、いずれも強調せず現状維持を訴える。対案が見えてこない。
テレビの討論番組で、賛成と反対のそれぞれの議論が噛み合っているような気がせず、「雰囲気」という土台で戦っているようにも見えたのは、この2つの論理のいずれが今の大阪の本質的な問題なのか、という議論がなされていないからかな、と思った。
もし自分が大阪市民と同じ立場だったら?
仮に今住んでいる都市で同じ投票があったなら、どうだろうか。いつも利用している市立の図書館がつぶれたら?市役所が別の場所に移転したら?警察署が規模縮小したら?救急や消防は?子供の医療助成は?
失うものはとても大きい。今の自分の生活で、意識はしていないが、欠かせないインフラが失われてしまうなら、住み続けようとは思えない。そう思うと反対に一票を投じるのだろう。
リーダーシップへの捨てがたい期待感
が、しかし、そのサービスも未来永劫続く保証はないわけで。もし、今住んでいる都市が「いずれ沈む泥舟」だとすれば?
税収は減り、施設は老朽化しても改修されない。社会保障もままならず、子供を育てにくくなる。賃金は上がらず支出は増え、生活するにも手一杯。
そんなとき、リーダーシップを持って改革をしようとする吉村府知事の姿に、どこか期待してしまう。「この人ならやってくれるのではないか。」と、自分自身、動画を見て感じる。論点が分かりやすい。
となると投票まであと5日。
失うかもしれないものに目を向けるのか、
得られるかもしれないものに希望を託すのか。
雰囲気だけで決めてはもったいない。ギリギリまで悩むんだろうな。
隣接都市の動向
もし今回賛成多数で可決となった場合、大阪市隣接の自治体も、特別区への移行が可能になる。
市を複数区に分割するなら住民投票が必要だが、1つの特別区とするなら不要。議会での承認で進めることができる。
隣接する10都市のうち、守口市、八尾市も特別区に関する議論を進めるとのこと。この2市の市長はいずれも維新。
豊中市の根拠は、市税収入の最大5割超が他の区に分配されると試算し、現在の市のサービスが維持できる保証がないという点。
参考文献:砂原庸平氏の著書『大阪』