山崎豊子『沈まぬ太陽』がすごすぎる

この年末年始であっという間に読んでしまいました!
文庫にして5巻。3部構成になっており、
1〜2巻:アフリカ編
3巻:御巣鷹山
4〜5巻:会長室編
という流れです。


半沢直樹シリーズのように「勧善懲悪!悪は許さん!」という話ではなく、 むしろ悪に立ち向かっても跳ね返され、社会はそんなキレイなもんじゃないと感じさせられ、 読んでいて辛い場面がいくつも出てきます。
最後も決して、主人公が救われる(報われる) というわかりやすいハッピーエンドではないです。
が、それでも読み始めたら止まらない山崎豊子さん。
読了後はちょっとの間、放心状態でした。


このお話は、日本航空123便、 ジャンボジェット機の墜落事故で520名以上の方が亡くなられた 事故を描かれたお話です。
映画化、ドラマ化もされていて、たくさんの方が、 どんなお話かきっとご存知かと思いますが、 ざっくりこんな感じで紹介させていただきます。

 


先輩からどうしてもと頼まれ断れ切れず、 国民航空労働組合の委員長の任務を1年限りで引き受けた主人公、 恩地元。

正義感が強い恩地は、職場によって待遇差に格差があることを、 組合の代表として許せず、強い意志を持って団体交渉に臨む。
しかし会社側の煮え切らない態度に、恩地はついに、 なんと首相フライトを控えた当日、ストライキを決行する。 組合と会社の度重なる交渉の末、 首相フライトは無事に飛行することとなったが、 この1件が決定打となり、会社(および政府、当時はまだ民営化前だったのですね)から「アカ」 というレッテルを貼られ危険人物認定された恩地。
組合の委員長を2年間全うし職場に復帰して、わずか半年で、 カラチ(パキスタン)という僻地に転勤するよう命じられる。


2年で帰還という社内規定を必ず守る、という社長の言葉を信じ、 カラチで働くが、間もなく日本へ帰還となったときに、 今度はテヘラン(イラン)への転勤を命じられ、 その後もナイロビ(ケニア)への転勤など、 合計10年にもわたり、海外の僻地をたらい回しにされる主人公。


という感じで、アフリカでの生活を中心に、 ナイロビに至るまでの経緯を回想する形で描かれるのが第1〜 2巻のアフリカ編。
冒頭にお話した墜落事故は、 第3巻の御巣鷹山編で詳しく書かれることとなります。


会社からの執拗な嫌がらせ。当時の共産主義に対する嫌悪感。 自分自身が信じる正義が通用しない世界。

インターネットもスマホもなく、 国と国の間を移動するのもハードルが高かったであろう時代に、 家族と引き離されて、 遠いアフリカの大地で一人で生きるというのは、 身体的にも精神的にも、並大抵のことではなかったはず。
不当な差別人事には、読んでいて心が痛かった。 特に家族が切り離される場面は、読んでいてつらくてつらくて。
その中で独りで、 信念を曲げずに貫き通した恩地さんの姿には心打たれ、 読んでいてどんどん引き込まれるストーリーでした。

当時のアフリカの様子は詳しくはわかりませんが、 雄大な自然もあれば、栄えている都市もあったようです。 その一方で、貧富の差は激しく、差別意識も依然残り、 階級社会制度も残っていたよう。 かつての奴隷の歴史に触れられる場面があるのですが、 人身売買があったというのは、人類の暗黒の歴史ですね。


ただ、「ポーレポーレ」=ゆっくりゆっくり、 という人々の雰囲気、アフリカでの動物たちの姿や、 広大な自然の風景を想像すると、どんなところなんだろうか、 実際に行ってみたい。
私はこれを読んで、3年後、近い将来、親父と息子を連れて、 ケニアタンザニアに行って感じてみたいという思いが、 すごく強くなりました。

 

https://www.amazon.co.jp/沈まぬ太陽%E3%80%881〉アフリカ篇-上-新潮文庫-山崎-豊子/dp/4101104263