映画『グリーンブック』

週末に、1つの映画を観ました。それは、『グリーンブック』。2018年に公開された映画で、アカデミー賞の作品賞なども受賞されているようですね。

 

まず「グリーンブック」とは何?という感じかと思うのですが(私だけ?)、これは、「黒人ドライバーのためのグリーンブック」という、アメリカが人種隔離政策時代の1930年代から1960年代に、自動車で旅行するアフリカ系アメリカ人を対象として発行されていた旅行ガイドブック(Wikipedia参照)だそうです。

 

舞台は1962年のアメリカなのですが、当時のアメリカでは人種隔離が正当化されていたんですね。「白人」と「それ以外の有色人種」を政策的に隔離していたわけです。レストラン、トイレ、宿泊・・・映画の中でも「Colored Only」という表記の看板がモーテルに掲げられているなど、個人的には結構ショッキングでした。

 

で、その隔離度合いがひどかったのがアメリカ南部エリアで、アメリカ深南部とかディープサウスとか呼ばれているようです。この背景には、農業が経済の中心で、安価な労働力が必要だったことから、奴隷制度を維持しようとしていた、ということが挙げられます。奴隷制を支持する南部vs否定する北部、という対立が、南北戦争に発展した一因になったのですね。

 

ストーリーは主に2人の男性を中心に進みます。

ドン”ドクター”シャーリーという、黒人ピアニスト。この人、本当かウソかわかりませんが、作中ではカーネギーホールの上に住んでいました。大阪だとフェスティバルホールの最上階に住んでる感じ?笑 

ドン”ドクター”シャーリーは、トリオのバンドを組んでいて、バンドとしてディープサウスに8週間もの興行に出かけることになりました。危険な南部に、ドライバー兼用心棒として雇われたのが、トニー・リップというイタリア系アメリカ人。本名はトニー・バレロンガだそうです。

 

2人はニューヨーク(アメリカの北部ですよね)のブロンクスから、車で南下しながら各地でコンサートの舞台に立ち続けます。道中、衝突を繰り返しながらも互いの理解を深め、徐々に信頼関係を築き、支え合うようになります。

 

私が一番印象的だったのは、2ヶ月かけて到着した最後の舞台。アラバマ州バーミンガムでのツアーの最終公演の夜。公演の前にバンドメンバーが言ったセリフです。

 

「ドクターは、北部にいればこれ(南部ツアー)より3倍の金が稼げた。でも彼はわざわざ南部を選んだ」

「才能だけでは人の心を動かせない。勇気が人の心を動かすのだ。」

ドン”ドクター”シャーリーは、勇気を持って自ら行動した。差別を受けること、酷い扱いを受けることがわかっていてもなお、強い覚悟を持って理性的に誇り高く行動し続けた。凛とし続けていた。その姿が本当に素晴らしいな、と。

 

実話に基づいた素晴らしいストーリー。

2人が互いを支え合う、距離が近づくシーンも、とても印象的です。最後のシーンも、好きです。

でも、だからこそ、歴史を知らないまま観たのが後悔されます。南北戦争奴隷制、人種隔離政策・・・どれだけ成功をおさめ、華々しい舞台に立ってスポットライトを浴びていたとしても、厳然として存在する人種差別。かなりショッキングでした。

 

2時間の使いみちがわからないという方は、ぜひ。

 

ちなみに、これを書いていてニューヨークのブロンクスには「ブロンクス動物園」という、私が行ってみたい動物園がありました。興味を持ったのには、「沈まぬ太陽」の主人公である恩地元さんが物語の終盤に訪れて・・・というきっかけがあるのですが、今回とは関係がないので、またどこかで触れたいと思います。